温かい型どりの材料 寒天印象材について
こんにちは、院長の成田です。
今回は寒天印象材といって、削った歯を精密に型どりをするための必須アイテムである寒天印象材についてお話してみたいと思います。
歯科材料学のお話です。少し硬い内容になっています。
被せ物をする時にピンクの粘土のようなものを使った型どりと温かい材料を使った型どりをした経験があると思います。
ピンクの粘土のような型どりの材料をアルジネート印象材といいます。
温かい型どりの材料を寒天印象材といいます。
寒天印象材って何なのか?全くわかりませんよね?想像すらつかないかもしれません。
しかし、寒天はお聞きになったことはあると思います。そうです。あの寒天です。
なんとビックリ、食べる寒天・つまり海藻を原材料として型を採っているのです。
少しでもご興味を持ってもらいたいがために身近なものを例に出してお話をさせていただいております。
寒天印象材の特徴
下記はクラーク社のHPから引用しています。
ゾル化(液体)とゲル(個体)化といい、ゾルゲル反応ともいいます。
温かいと液体、冷えると個体になる性質があります。
歯科用寒天印象材は、その約80%が水分で出来ているコロイドです。
寒天で型どりができるのはコロイド(粒子が物質の中で均一に散らばっている状態)の特性であるゾル化とゲル化が大きくかかわっています。
・加熱すると約85℃で寒天印象材は液体状のゾルに変わり始めます。ゾルの状態では、寒天繊維はバラバラで動きをもちます。この間に型採りをします。固まってしまってからでは型採りができなくなってしまします。
・冷却すると約70℃で流動性を持たないゲルへの変化が始まります。ゲルの状態になると、寒天繊維が網目状になって動かなくなります。お口の中で固まってから外して、すぐに石膏を流し込んで石膏模型を製作していきます。
・寒天印象材として使用する場合には60℃~64℃でストレージ(保温)して、保温器から取り出して50℃以下に下がる前に操作をします。使用する温度に幅があるのは流動性と言って、流れやすさが変わるためです。どのくらいの範囲に寒天を使用するのか見よっても変わります。
非常に難しい話になってしまいましたが何がいいたいかというとこのような複雑な反応があるので、
寒天印象材の再利用は不可ということです。ワンユーズ、つまりは使い捨てということです。感染予防の観点からも使い捨ては必須です。
しかしながら、使わなかった印象材を翌日に再ボイリングして使用している歯科医院は非常に多く存在します。
見た目が変わらないので、再利用できると思い込んでいるのです。
しかしながら、成分の80パーセントが水分でその水分を蒸発させながらゾル化させるので、
再ボイリングすると水分が蒸発してしまうので1回目の状態と成分が大きく変わっているのです。
メーカーが表記している成分とは異なってしまうため、精度が著しく低下します。
結果、石膏模型の精度が低下し、いくら腕のいい歯科技工士が詰め物・被せ物を作ってもお口の中に合わないものが出来上がってしまう。
悪循環です。
大宮なりた歯科医院では材料の使用方法を遵守して診療を行なっています。
これからも新製品やこれまでの製品に対してアンテナを高くして診療の向上に努めたいと思います。