こんにちは!大宮なりた歯科医院院長の成田裕紀です。
患者さんからのご質問で「歯並びと噛み合わせは同じですか?歯並びが悪いと噛み合わせが悪いとよく耳にするのですが。」と聞かれることが多々あります。そこで、この場を借りてお答えしていこうかと思います。
歯並びと噛み合わせは、よく混同されることがありますが、実は全く別の概念です。歯並びは歯の並び方や間隔、傾きなどを指し、上下単独でも考えられますが、一方の噛み合わせは上下の歯が合うことを指し、上下が必ずセットでないと成立しません。
噛み合わせを専門用語で咬合といいます。臨床咬合学辞典によると咬合の定義は閉口したときに上下顎の歯が接触する動作、さらには上下顎の歯の接触またはその接触関係を咬合とよぶと記載してあります。
まず、歯並びについて考えてみましょう。歯並びは個人によって異なり、遺伝の影響が強く出ます。また、生活習慣によっても変わることがあります。例えば、歯並びが悪くなる原因としては、乳歯の時期における早期の歯抜け、歯並びに影響を及ぼす吸い指や舌の癖、または口呼吸などが挙げられます。歯並びが乱れると、見た目や美容の面で悩みを抱えることもありますが、健康上の問題を引き起こすこともまれにあります。
次に、噛み合わせ(咬合)について考えてみましょう。噛み合わせは、上下の歯が接触している状態を指し、噛み合わせが不適切な場合、歯への負担が増えたり、顎関節症や頭痛などを引き起こす可能性もあります。また、噛み合わせ不良は食事の際に噛む力の低下や咀嚼がしづらいために消化不良を引き起こすこともあります。
歯並びと噛み合わせには繋がりがある一方で、それぞれが独自の要素を持っています。歯科矯正治療によって歯並びを改善することは、患者さんの審美性や見た目の向上につながります。しかしながら、噛み合わせに関しては別のアプローチが必要となります。噛み合わせの改善には、患者さんの状態に合わせた個別のアプローチが必要です。歯並びと噛み合わせを的確に評価し、適切な治療を提案することで、患者さんの口腔健康と全身の健康を維持することができます。
噛み合わせの検査方法として一般的には咬合紙という赤い紙を用いて接触しているところを診る検査方法があります。しかしながら、これだけでは不十分だと言わざるを得ません。
非常に難しい話ですが、
ガイドラインでは以下の8つの方法があります。
(1) 咬合紙検査法
咬合紙を上下歯列間に介在して咬合させることにより,咬頭嵌合位や偏心咬合位での咬合接触状態を観察する.
(2) ワックス検査法
咬合検査用ワックス(オクルーザルインディケーターワックスなど)の粘着面を下顎の咬合面に置 き咬合させた際のワックスの穿孔部位を水溶性鉛筆でマーキングする.
(3) 引抜き試験検査法
引抜き試験用試験紙を上下歯列間に介在させ,咬頭嵌合位や偏心位で咬合させ,1歯ずつの引き抜きによって咬合接触部位や接触の強さなどを検査する.
(4) シリコーンブラック検査法
シリコーン印象材を下顎歯列上に置き,軽く咬合させ,硬化後口腔外に取り出し透過光によって咬合接触状態を検査する.
この方法では,わずかな咬合接触状態の差異を判定することができまたカメラとコンピュータの併 用により接触面積や上下顎歯の接触関係などを定量的に評価することも可能である.
(5) 咬合接触圧検査法
a. T-Scan検査法
b. デンタルプレスケール検査法
咬合接触点の分布,咬合接触面積,咬合力などを視覚的,定量的に評価することができる
(6) 咬合音検査法
咬合音検査装置は,咬合音を両側の眼窩下部あるいは頰骨弓部に設置したマイクロフォンや加速度をピックアップで検出し,表示するもの
(7) 模型咬合検査法
上顎模型を咬合器にフェイスボウで装着後,中心位,咬頭嵌合位,偏心位などのインターオクルーザルレコードを用いて咬合器の調節と下顎模型の装着を行うことにより,上下歯列の関係を咬合器上に再現し,異常の有無やその程度を検査する方法
(8) 下顎運動検査法
上下顎の相対的な位置関係を下顎運動記録装置で測定した下顎運動データに三次元計測器で測定した歯列模型の形態データを組み合わせることにより,任意の偏心位における咬合接触状態を再現・評価する
※補綴学会ガイドラインより引用
長くなりましたが、いかがだったでしょうか?
このように実は噛み合わせの検査法にはたくさんの種類があります。
歯並びだけでなく噛み合わせも治すのであれば、術前・術後に上記のような検査を複数用いて客観的に評価することが必須だと考えます。
歯並び(見た目)が良くなっても噛み合わせ(機能)は良くないことも多々あります。
歯並びを治すこと=噛み合わせを治すことではありませんので十分にご注意ください。