こんにちは、院長の成田です。
不正咬合という言葉を聞いたことがありますか?私たち歯科関係者でも非常に誤解されがちな言葉ですので、解説させていただきたいと思います。
噛み合わせを咬合といいます。そこで、咬合学に基づきお話をしたいと思います。
咬合学の辞典によっては不正咬合が記載されていません。つまり、定義されていないのです。
不正咬合の反対語は何でしょうか?答えは正常咬合です。しかしながら正常の反対は不正でしょうか?普通に考えれば異常ですよね?
なぜ異常咬合ではなく、不正咬合というのでしょうか。不正というとあたかも悪いことをしてしまったかのような感覚に陥ってしまいますよね。
臨床咬合学事典によると
正常咬合の定義は咬頭嵌合位において上下顎の歯が解剖学的に正常と思われる咬合状態にある場合を正常咬合というとされています。
なんと正常と思われるというなんとも曖昧な定義なのです。それだけ定義が難しいということです。
正常咬合の定義は1921年にHellman先生が上下顎の歯が138点で接触して、1歯対2歯の咬合関係で、咬頭・窩、隆線と歯間鼓形空隙、
隆線と溝の接触関係をもつとした。この咬合関係が正常咬合の定義として長く認められてきたそうです。
今から100年以上前に138点の接触なんてどう調べたんですかね。先人の方々は本当にすごいです。凄まじい研究だと思います。
臨床咬合学事典によると異常咬合の定義は、歯、歯列、顎顔面などの発育、形態、機能が種々の原因によって異常をきたし、
咬合が正常ではなくなった状態の総称である。したがって、正常咬合からの『ずれ』は全ての異常咬合に分類されるわけであるが、
正常の定義により、その実態は大きく異なる。と記載されています。矯正学的には異常咬合は『不正咬合』と記載されることが多い。
ここがポイントで、咬合学の話をしているのに突如として矯正学の話が出てくるのです。
さらには正常の定義によって大きく異なるということで、かなり曖昧な定義になっています。
咬合学事典によると不正咬合の分類には形態的な立場から分類する方法と成因から分類する方法とがあると記載されています。
形態的な不正咬合の分類
⑴個々の歯の位置異常
⑵歯列弓の形態異常
⑶上下顎歯列弓の近遠心的関係の異常
⑷上下歯列弓の垂直的関係の異常
⑸上下歯列弓の水平的関係の異常
成因的な不正咬合の分類は遺伝と環境に大別される。
不正咬合を脳頭蓋と顔面頭蓋に関連づけることは、不正咬合を正しく評価し、その治療を確立する上で大きな意義をもっている。
と記載されています。不正という言葉だと歯並びの悪化は日常の習慣等の影響によるものが大きいと勘違いされてしまうことが非常に危険です。
もちろん悪習癖の影響はあります。しかしながら、環境因子だけではなく、遺伝的な影響も大きいです。
昨今マウスピース矯正が流行っていますが、不正咬合には上記のような分類や原因があります。
骨格等が関連してくるかどうかの診断は必須です。
歯だけが見えている3Dのイメージ画像では根っこの部分や骨が全く見えないので、3Dイメージ画像だけで判断はできないということです。
少なくとも顎顔面頭蓋が診断できるレントゲンを撮影し、できればCTで3次元的に顎顔面全体から診察・検査・診断する必要があります。
術前術後の噛み合わせの状態に関しても非常に重要です。見た目だけではなく、前回記載した咬合検査にて客観的な評価が必須です。
また、矯正歯科治療は治療年数が数年にわたる治療です。先生とのお付き合いも長期に渡ります。
自分と相性の良い先生に診てもらうことが肝要です。何回も通院しているうちに不測の事態が起こることもあります。
急なトラブルにも即座に対応をしていただけるように矯正専門の非常勤の先生がたまに来る一般歯科医院ではなく、
矯正歯科専門の先生が常勤の医院さんの受診を強くお勧めします。