喫煙と歯周病の関係🚬
タバコが体に悪いということは、今や誰もが知っている常識です。肺がん、心臓病、脳卒中など、さまざまな病気のリスクを高めることが知られていますが、意外と見落とされがちなのが「口の中」、特に「歯周病」との関係です。
歯周病は、歯を支えている骨や歯茎が徐々に壊され、最終的には歯が抜け落ちてしまう病気です。そして喫煙者は、非喫煙者に比べて歯周病のリスクが2~6倍高いと報告されています。さらに、喫煙によって歯周病の治療効果も低下することが分かっています。
歯周病とは?基礎知識を確認
歯周病は、「歯肉炎(しにくえん)」と「歯周炎(ししゅうえん)」に大別されます。
- 歯肉炎:歯ぐき(歯肉)に炎症が起きて赤く腫れたり、ブラッシング時に出血したりしますが、骨の破壊はまだ起きていません。
- 歯周炎:炎症が進行して、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)という骨が破壊され、歯がぐらぐらしてきます。最終的には歯が抜けてしまうことも。
歯周病の主な原因は、歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊です。このプラークが歯と歯ぐきの間にたまり、細菌が炎症を引き起こすことで、歯ぐきや骨にダメージを与えます。
喫煙が歯周病に及ぼす影響
1. 血流の悪化
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、歯ぐきへの血流を悪化させます。これによって免疫細胞がうまく届かず、炎症に対抗する力が弱まります。
さらに血行が悪くなることで、歯ぐきの酸素や栄養の供給が低下し、組織の修復が遅れます。これが歯周病の悪化を招く一因になります。
2. 免疫力の低下
喫煙者は、白血球(特に好中球)の働きが低下していることが知られています。白血球は細菌と戦う重要な免疫細胞です。この働きが鈍ると、口の中の細菌に対抗できず、炎症が慢性化しやすくなります。
3. 歯周ポケットの悪化
喫煙者は、歯と歯ぐきの間にできる「歯周ポケット」が深くなりやすいことが多くの研究で示されています。歯周ポケットが深いと、プラークや歯石がたまりやすく、歯周病の進行が早まります。
4. 自覚症状が出にくい
非喫煙者であれば、歯周病が進行すると歯ぐきの腫れや出血が起きるため、異常に気づきやすいです。しかし喫煙者は、血流が悪くなっているために出血しにくく、「静かに進行する歯周病」となりがちです。そのため、気づいたときには重度に進行していたというケースも少なくありません。
喫煙者の歯周病リスクはどれくらい?
数々の疫学調査によって、喫煙が歯周病の発症・進行に大きく関与していることが示されています。
- 喫煙者は、非喫煙者に比べて2〜6倍 歯周病にかかりやすい。
- 一日の喫煙本数や喫煙歴が長いほど、歯周病の重症度が高くなる。
- 喫煙をやめた人は、時間の経過とともに歯周病リスクが下がり、最終的には非喫煙者と同程度に近づく。
喫煙は「量」と「期間」に比例して口腔内に悪影響を与えることが分かっています。
歯周病治療における喫煙の影響
歯周病の治療では、プラークや歯石の除去(スケーリング・ルートプレーニング)を行い、口腔内の環境を整えることが基本です。場合によっては、外科的処置や再生療法が行われることもあります。
ところが、喫煙者は以下のような理由で治療効果が下がる傾向にあります。
1. 傷の治りが遅い
血流の悪化と免疫力の低下により、手術後の傷の治癒が遅れます。また、治癒の過程で必要な酸素や栄養が届きにくいため、治療効果が現れにくいのです。
2. 再発しやすい
一度治療しても、喫煙を続けていれば口腔内環境は改善されません。その結果、再発のリスクが高くなります。
3. インプラントの成功率も低下
喫煙は、歯周病だけでなく、インプラントの成功率も低下させます。インプラントを支える骨とチタンの結合がうまくいかず、脱落するリスクが上がります。
禁煙のメリット🚭
禁煙は、歯周病のリスクを大きく減らすだけでなく、口腔内全体の健康にも好影響を与えます。
禁煙によって得られる口の中の変化
- 歯ぐきの血流が改善し、炎症に対する抵抗力が回復する
- 治療効果が高まり、治癒が早くなる
- 歯ぐきの色が健康的なピンク色に戻る
- 口臭の改善
- 味覚や嗅覚の回復
また、禁煙後5年以上経過すると、歯周病のリスクは非喫煙者と同等に近づくと言われています。


